それからしばらく走ってタクシーが到着したのは空港のファーストクラス専用ゲート。
そこには何台もの高級車が並び、高そうな服を着た人々が下りていく。
正直場違いだなあと思いながらも、私はタクシーを降りた。

ふうぅー。
降りた瞬間の熱気にやられ、大きく息を吐く。

VIP達が使うゲートだけあって車から建物までの距離は短く外気に触れる時間はそう長くはないが、たとえ一瞬であってもやはり暑い。

「アッ」
暑さのせいか少し歩いたところでふらついた。

「あ、危ない」
「え?」

咄嗟に体を支えられたことと聞こえてきた言葉が日本語だったことに驚いて顔を上げ、そして固まった。

「大丈夫ですか?」

不思議そうに私を見る深緑色の瞳。
身長は185センチ越えで筋肉のついたがっちりとした体格は、見た感じ20代後半だろうか。とってもワイルドで、彫りが深くて、でも中東の人とは違う涼し気なまなざしはアジアを連想させる。
真っ白なアラブの民族衣装カンドゥーラを着ているから現地の人なのかもしれないけれど、顔立ちはアラビアンというほど濃ゆくもない。
そう言えば日本にも似たような顔立ちの俳優さんがいたな。
アクションからコメディーまで何でもこなすバイプレーヤーで、私も好きだった。

「大丈夫ですか?」
「は、はい」

再び声をかけられ何とか返事はしたものの、私は茫然と男性を見つめていた。