搭乗までの時間はとても長いつもりだったのに、ハサンと過ごすことで短く感じられた。
そして見るもの聞くもの体験するものすべてが夢の中のようで、幸せだった。
これは人生の思い出。
何度も自分にそう言い聞かせて、私はラウンジで過ごすひと時を目に焼き付けた。

「じゃあ後で」
「はい」

挨拶をしなくてはならない人がいるからと言うハサンと一旦別れ、搭乗ゲートに向かう。

それにしても変ね。
すでに出国審査は終わっていて今更誰かに会って挨拶をなんてことはできないはずなのに、どういうことかしら。
もしかして同行者でもいたのかななんて思いながら、去っていくハサンを見送った。