「え……?」
そうつぶやいた声は、私と幌延さんのどちらのものだったろう。両方だったかもしれない。
「知って、た……?」
幌延さんが茫然と立ちつくす。
「ええ、最初は騙されたけどね」
蝶子さんは苦笑しながら、私と幌延さんをソファーに座るよう手で示した。気が抜けてしまった私たちはぼんやりと従う。
「一緒に暮らしているうちに、なんとなく違うなって思い始めたの。……どこがどう、とは言えないんだけどね。ああ、この子は亜純じゃないなって」
「どうして、なにも言わなかったんですか?」
私がおずおずと尋ねれば、蝶子さんは肩をすくめた。
「純くんが私のためにしたんだろうなって、そう思ったからよ」
「そこまでバレてたのか……」
がっくりと肩を落とした幌延さんに、蝶子さんは厳しい視線を向けた。
「どれだけ一緒にいたと思ってるの? よそのお嬢さんまで巻きこんで……前田さんは前田さん、亜純は亜純なんだから、同じになれるはずないでしょうに」



