「亜純……? 本当に、亜純なの?」


 幌延さんのお祖母さん──幌延蝶子さんの、小粒なブドウを思わせる瞳が潤む。


「心配かけてごめんなさい、お祖母ちゃん」


 私は小柄でほっそりした身体を抱きしめた。良心がチクチクするのは知らないふりだ。


「いいの、いいのよ……貴女が無事だったなら、それで……」


 蝶子さんは、お年よりとは思えないほどの力強さで私の背中に手を回した。涙声は詰まって、言葉ではなくすすり泣きがその口から漏れた。

 なにも知らない人から見れば、ドラマのような感動の再会──といったところだろう。

 でも実態は詐欺だ。

 いくら綺麗ごとを並べたてても、彼女を騙しているのに変わりはない。


「祖母ちゃん、姉さんが苦しそうだからそのへんにしてあげて」


 幌延さんがそっと蝶子さんの肩を抱いた。その静かなささやきに、蝶子さんはハッと我に返って私から離れた。


「ああ、そうね。私ったら……」


 そう言って頬を染める姿は、恥じらいを覚えたばかりの乙女のようだった。つまり、とっても可愛らしい人だった。


「亜純、今日は貴女の好きなもの作るからね。なんでもリクエストしてちょうだい。ああでも野菜のスムージーだけとかはダメよ。若いんだからしっかり食べて──」

「祖母ちゃん、姉さん困ってるから!」