※彼の姉ではありません


「姉は、失踪するまでは私や祖母と一緒に暮らしてたんです」

「となると、お姉さんが着ていた服を私が……」

「おっしゃる通りです、体型の維持も契約内容に含まれます」


 大事な身内が着ていた服を、他人に着せなきゃいけない。そして家族だけの空間に、私を偽りの家族として招きいれないといけない。
 
 愛する祖母のためとはいえ、かなりストレスがかかるだろう。苦々しい顔になるのも当然だ。


「さすがに……お姉さんの部屋を使うわけじゃないですよね?」

「いえ、使っていただきます」


 私は今度こそ絶句した。行方不明とはいえ、お姉さんの部屋を──本人にとって一番プライベートな空間を荒らしてもいいと、幌延さんは言ったに等しい。

 幌延さんは眉根を寄せてイライラしてるようにも見えた。お祖母さんに疑われないようにするための、苦渋の決断なんだろう。


「……なるべく触らないようにしますから」

「どうかお気を遣わずに過ごしてください、私も出来る限りの配慮はいたします」


 そうか。下手に緊張してたり遠慮したところを見せてしまうと不信感を抱かれる可能性がある。幌延さんは、それをなるべく失くそうとしてるんだ。


「では、絶対に触ったらダメなものを教えてください」