「おまっ……、なに考えてんだよ!」

 うしろからガシッと腰のあたりを抱きかかえられ、そのままうしろに倒れ込んだ。

「痛っ……」

「ご、ごめんなさい! あの、大丈夫……」


 わたしのうしろで尻もちをついて痛そうに顔をゆがめていたのは、なんと葉月先輩だった。


「そこまでする必要がどこにある。俺には必要のないものなんだろ?」

「でも……わたし、勝手なことを……」

「そこまで言ってくれるヤツ、今まで一人も周りにいなかった。俺の顔色を伺ってばかりで、そんなやつらの言うことを、そもそも信じるつもりもなかった。けど……水元は違う」

「葉月先輩には、五藤先輩がいるじゃないですか」

「……そうだな。アイツには、いつも感謝してる。でも、どうしてもアイツとは張り合ってしまうんだよ。言う通りにしたら負けな気がしてしまってな」

 そう言って、葉月先輩が苦笑いする。


 そっか。普段はあんな態度だけど、五藤先輩のこと、ライバルみたいに思っているのかな。