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 わたしがこの学校からいなくなるのなら、せめて一花さんにはもっと葉月先輩のそばにいてあげてほしい。


「え……一花について知りたいって。その名前、どこで聞いたの?」


 わたしは、いろいろ事情を知っていそうな五藤先輩のもとを訪ねた。

 幼稚舎から一緒だったって言ってたし、きっと一花さんのことも知っているはず。

 ……そう思ったんだけど。

 わたしの問いに、五藤先輩は困惑の表情を浮かべた。


「実は、葉月先輩がお休みになっているときに、うわごとのように一花さんの名前を呼んでいて」

「あー……なるほど。そういうことね」

 そう言ったまま、五藤先輩は顎に手を当てて考え込んでしまった。

「……悪いんだけど、さすがに一花のことは軽々しく俺がしゃべるわけにいかないからさ。……かといってアイツに直接聞くってのもなー……いや。逆に一花の束縛から解放されるチャンスなんじゃね? でも、うまくいかなかったときに一番傷つくのは栞奈ちゃんだろうし……」

 五藤先輩が一人でぶつぶつとつぶやいている。