きっと葉月先輩はなにか大きな事情を抱えているに違いないんだ。

 不眠に悩まされながらも、学園のためにがんばってる。

 そりゃあ、わたしだって退学は困る。

 わたしのワガママを許してくれた両親に申し訳なさすぎて、合わせる顔がない。

 でも、だけど……。

 葉月先輩は、この学園にとって、なくてはならない存在なんだよ、きっと。


「栞奈は、こんなことされてもまだ葉月先輩を庇うの? そんなの、おかしいよ」

 涼音が、悔しそうにぎゅっと唇を引き結んでいる。

「涼音。ありがとう。その気持ちだけで、すっごくうれしいよ」

「栞奈」

 口をへの字に曲げる涼音を安心させたくて、わたしは無理やりにこっと笑ってみせた。


 きっと、わたしは葉月先輩のそばにいない方がいいんだ。

 葉月先輩は、きっと一花さんに弱いところを見せていないに違いない。

 ちゃんと見せて、頼ればいいのに。

 男だからって、頼りがいがなきゃいけないなんて、そんなこと、気にすることじゃないのに。

 一花さんだって、きっと葉月先輩に頼ってもらえたらうれしいはずなのに。

 わたしだって……もっと葉月先輩に頼ってほしかったよ。