***
「わわっ。待って、待って。わたしがやるよ!」
翌朝、昇降口のところで靴を履き替え中のクラスメイトの橘爽くんのもとへと駆け寄ると、大きなスニーカーを拾い上げた。
「さんきゅーな、水元」
橘くんが、よく日に焼けた顔でニカッと笑う。
「あの、その足……」
大丈夫? っていう言葉を飲み込んだ。
だって、ごついギプスで足を固定して松葉杖までついていて、大丈夫なわけがない。
「救急車なんて俺、昨日はじめて乗ったわー」
それじゃあ、昨日のあの救急車って……。
「練習中に接触して、ぽっきり。ってかさ、骨が折れるときって、あんなふうにリアルに音がするんだなーって、自分のことなのに、なんかめちゃ冷静に聞いてたわ」
そう言って、ははっと笑う。
そんなの、全然平気じゃないはずなのに。
まだ松葉杖に慣れていないのか、若干ヨロヨロしながら段差を上がり、廊下を進んでいく。
階段を目の前にした橘くんが、はぁーと大きなため息をついた。
普段ならどうってことないのに、一年生の教室のある三階が、まるで雲の上にでもあるかのように遠く感じる。
「わわっ。待って、待って。わたしがやるよ!」
翌朝、昇降口のところで靴を履き替え中のクラスメイトの橘爽くんのもとへと駆け寄ると、大きなスニーカーを拾い上げた。
「さんきゅーな、水元」
橘くんが、よく日に焼けた顔でニカッと笑う。
「あの、その足……」
大丈夫? っていう言葉を飲み込んだ。
だって、ごついギプスで足を固定して松葉杖までついていて、大丈夫なわけがない。
「救急車なんて俺、昨日はじめて乗ったわー」
それじゃあ、昨日のあの救急車って……。
「練習中に接触して、ぽっきり。ってかさ、骨が折れるときって、あんなふうにリアルに音がするんだなーって、自分のことなのに、なんかめちゃ冷静に聞いてたわ」
そう言って、ははっと笑う。
そんなの、全然平気じゃないはずなのに。
まだ松葉杖に慣れていないのか、若干ヨロヨロしながら段差を上がり、廊下を進んでいく。
階段を目の前にした橘くんが、はぁーと大きなため息をついた。
普段ならどうってことないのに、一年生の教室のある三階が、まるで雲の上にでもあるかのように遠く感じる。



