「だ、大丈夫ですか!?」

 ひと気のない廊下を、前からふらふらと歩いてきた長身の男子生徒が、壁に手をついたかと思ったら、ぐらりと前に倒れ込む。

「え、ちょっ……」


 え、これ……ムリムリムリぃ!

 間一髪、彼の体を支えようとしてはみたものの、小柄なわたしには到底無理な話なわけで。

 彼の体を抱きかかえたまま、わたし——水元栞奈はその場にぺたんとへたり込んだ。


「あの、保健室……」

「悪い。しばらくこのままで……」

 朦朧とした様子の彼がぼそりとつぶやくと、すーすーと寝息を立てはじめた。


 いや、このままでって……これって、いわゆる膝枕というやつなのでは……!?


「あ、あのっ……」


 眠り込んでしまった彼を揺り起こそうとして——手を止めた。

 よく見ると、顔色が真っ青。本当に具合が悪そう。