スイセンの花束を君に


 6時間目が終わり、部活に入っていない私は帰る準備をする。準備できたのでリュックを背負って教室を出ようとすると誰かに肩をトントンされた。振り向くと、前の席の久保さんと、久保さんの取り巻き的存在である山崎さんに高峯さんが立っていた。
「広野さん帰宅部だったよね?掃除当番代わりにやってくれない?知ってるだろうけどうちらダンス部で忙しいから掃除とか面倒なんだよね。」
 久保さんはそう頼んできた。山崎さんと高峯さんも、「お願い。」と言うように手を合わせている。3人とも美人なので迫力がある。
「全然大丈夫だよ。何掃除したらいいのかな?」
 私は笑顔を作って、そう言った。すると3人はニコッと笑って、「ありがとう。うちらみんな教室掃除だからそんな大変じゃないよね。ほうき当番と窓拭き当番と黒板当番だから。」と久保さん。それに続き、山崎さんが「よろしくね。手、抜いたりしたら私たちが怒られるんだから分かってるよね?」と凄む。
「うん、3人とも同じ掃除場所なのありがたいよ。教えてくれてありがとう。しっかり掃除するね。」
 私は声が震えないよう、3人に聞こえる声量になるよう意識しながらそう答えた。高峯さんは2人より一歩下がったところで居心地悪そうにしている。私に悪いと思っているのかもしれない。私のことなんか気にしなくていいのに、と思い、申し訳なくなった。久保さんと山崎さんは「じゃあ。」と教室を出ていき、高峯さんはチラッと私を気にする素振りを見せつつ2人を追いかけていった。高峯さん、大丈夫かな。本当は久保さんたちと合わないけど無理して合わせてるんじゃないかな。って、余計なお世話だよね。きっと高峯さんは高峯さんなりの考えがあってあの2人といるんだろうし。
 
 そんなことを考えていた私は、今のやり取りをじっと見つめる人がいたことに気づいていなかった。