「おはよう。」
 声を掛けられ、私はびくっとしながら声のする方を向くと、学年主任の先生が立っていた。私は「おはようございます。」と小声で言い、下を向いてまた歩き出す。
 そっか。今日は水曜日だから先生が校門前で見回りをしてるんだ。月曜日が祝日で土、日、月と休みだったからか、今日が火曜日だと思っていた。
 周りに目を向けると、まばらに生徒が歩いている。今日は少しゆっくり歩きすぎたようだ。私はいつも、生徒の中では一番くらい早く学校に来ている。できるだけ生徒と登校中会わないように。なのに今日は、考え事をしていたせいでペースが落ち、みんなと同じくらいの時間に着いてしまった。
 生徒がいることに気づくと、だんだん感情が恐怖に包まれてきた。みんなが私のことを悪く言っているんじゃないか、バカにしているんじゃないか、と。怖い怖い怖い怖い。
帰りたいけど、すでに校門をくぐっていた私は、引き返して目立つということの方が怖いと思い直し、進まない足を無理矢理進める。