私はドアを開け、歩き出した。いつもの道を、いつもの景色をぼーっと眺めながら進んでいく。この時間は、何も考えない。何も考えないでいられるから心地いい。
 常に周りの目を気にしてばかりいる私にとって、通学時間は唯一気を緩められる時間なのだ。だから私は、わざと遠回りになる道を、いつもよりゆっくり目の速度で歩いている。この道は遠回りになるからか、同じ高校に通う生徒はほぼ見かけない。それがまた私にとってありがたい。知らない人だとしても、同じ高校の生徒だと思うとその人の目が気になるから。
 自意識過剰だとは分かっている。そんなに私のことを見ている人はいないことも分かっている。頭では分かっているんだ。それでも、私の体はビクビクしてしまうんだ。赤の他人ではない人の前では。