スイセンの花束を君に



 着替えが済み、一階へ駆け降り洗面所へ向かう。
 髪を結び顔を洗っていると、お母さんがキッチンから声をかけてきた。
「ゆーちゃん、食パン焼けたけど、食べれっか?」
 蛇口を捻って水を止め、足早にダイニングへ行く。
 お母さんにパンを焼いてくれたお礼を言い、いただきますをする。早くしなきゃ、遠回りできない。いや、もうすでに無理か。遅刻しないためには近道で行くしかない。
 そんなことを考えながらパンを食べ進め、飲むヨーグルトをぐいっと喉に流し入れた。ごっくんとして、ご馳走様といいながら私は席を立ち洗面所へ向かう。
 歯磨きをしていると、せーくんが起きて来た。
「おあおう。」
 口いっぱいに歯磨き粉が入っていたため、変なおはようになってしまった。せーくんは一度不思議そうな顔をしたが、すぐに不機嫌な顔に戻り、プイッと顔を逸らしてダイニングへ行ってしまった。
 うがいをした私はまた足早に二階へ。リュックを背負うと、重い気持ちになる。学校、行きたくないな。でも行かなきゃ。今日休んだら明日がもっと憂鬱になる。それに今日は木曜日で、あと2日で休みが来るんだから。うん、頑張れる。休みにはあーちゃんと会う約束もあるし、頑張ろう。あーちゃんのことを考えていたら元気が出てきた。
 足取り軽く階段を降りると、お母さんが心配そうな目で私を見る。私の顔を見ると、にこっとして、「大丈夫そうやね。"ちゃんと"笑っとる。」と言う。私はお母さんの言葉に首を傾げて、でも大丈夫なのは本当だから、こくっと頷いた。
「いってきます。」
 私はドアを開けながらそう言い、急ぎ足で学校への道を行く。
 ぼーっと早歩きしていると、同じ学校の生徒がちらほら。今日は遠回りしていないから、やっぱりいる。一気にどんよりとした気持ちに逆戻りし、帰りたいと訴える重い足を引きずるような気分で歩く。

いつのまにか、ゆっくりとした足取りになっていた。