あの日から妹は、父親に会いに行くのを嫌がり、行かなくなった。



酒を飲んで運転し、車にぶつかりそうになったのが相当怖かったようだ。



柚菜も怖かったが、行きたくないと言ったら、父親が悲しむと思い、言い出せなかった。



あれから何回か反対車線にはみ出すことはあったが、ぶつかりはしなかった。




土曜日

いつものように迎えに来て、車に乗り込む


今日の父親は、一段と呂律が回っていない。



柚菜「お父さん大丈夫?…」


父親は、何を言っているのかさえわからなかった。



いつもの様に、目を瞑り耳を塞ぐ



ビーーー


トラックのクラクションの音が響く


急ブレーキを踏む父親



柚菜は、前の座席に体をぶつける



「あぶねーな!反対車線だぞ!事故るだろうが!」



知らない人の怒号が響く


父親は、舌打ちをして車を急発進させた



その反動で、後ろのシートに転がり、柚菜は体を打ち付ける


柚菜「痛い」



柚菜は、怖くて声をあげて泣き出す



父親の実家の近くだった事もあり、実家に車を止める


父親「ごめんな柚‥お父さんダメだな‥」


祖母に電話をかけ、外に出てきてほしいと伝えると、父親はシートを倒し、寝始める



家からおばあちゃんが出て来て、車を開ける



おばあちゃん「柚ちゃんどうした?お家に入りな」



おばあちゃんに手を引かれ家に入るが、恐怖で涙が止まらない


おばあちゃんに、さっきあったことを全て話すと、呆れた表情をして、お父さんの弟に電話をしていた。


叔父がくると、頭を優しく撫でられて、謝られた


叔父「ごめんな柚。柚に怖い思いさせるなんて、お父さんはダメだよな。おじさんが家まで送るから。もう怖い思いをさせないから。ごめんな」


おばあちゃんの家を出て、お父さんの車の横を通り過ぎる



お父さんは、いびきをかいて寝ている


結局、父親も自分の事などどうでもいいんだと思い、悲しくなる柚菜



あの日以来、誰も父親に会いに行かなくなった