まるごと大好き!

「本当にありがとうねぇ」

 お婆さんが深々と頭を下げる。ロマンスグレーの、上品に整えられた髪からふわりといい香りがした。

「いいんです。私が好きでやってることですから」
「若いのに謙虚なのねぇ」

 シワだらけの顔をにこにこさせて、お婆さんは感心したように言った。
 私からもなにか話題をふったほうがいいかな。

「あの、ワンちゃんの名前、リリーって言うんですか?」
「ええ。この子ね、リリーっていうの。白百合にそっくりでしょう?」

 お婆さんの顔がデレデレと崩れた。マシンガントークが始まって、私は選択をミスったと後悔した。けどもう遅い。
 お婆さんは「血統書つき」とか「リリーより賢い犬はいない」とか、とにかくもうしゃべりにしゃべりまくった。私が相づちを打つヒマもないくらいに口が動く。
 ……だれも聞いてくれる人がいないんだろうなぁ。
 まぁ、お婆さんの家族が迎えにくるまでだし……と考えて、重要な事実に気づいた。

「もうすぐ迎えが来るわ」
「え、連絡したんですか……?」

 お婆さんが手を差しだしてきたので、そっとリリーちゃんを手渡した。
 ……いつの間に連絡してたんだろう?
 どうしてか、ひどくイヤな予感がした。