私は昂志に、自分の夢について話しはじめた。

「私ね、将来は医者になって、紛争地域とか難民キャンプとかに行って、世界中の人たちを助けたいの」
「大学は日本の医大に入りたくて、そこから留学もしたい」

 昂志の顔に失望の色が見えるのが怖くて、私は何度も目をそらしそうになる。
 言葉もつっかえて、声も意識してないと小さくなってしまいそう。
 学校集会で演説したときのように、自信をもって自分の夢を話したいのに。
 ……相手が昂志だと思うと、とたんに声がつまりそうになる。
 昂志は私に目を合わせたまま、うん、うんと話をさえぎらずに聞いてくれた。
 ……内心は、どう思ってるのかまったくわからないけど。

「だから、昂志と一緒にいる時間は……ほんの少ししかとれない」
「昂志には、どんなときでも一緒にいてくれる子と付き合ってほしいって……そう、思ってる」
「私は……自分の夢と昂志だったら……自分の夢を選ぶ」

 だから。

「……昂志とは、付き合えない」