「静波、顔色ヤバいぞ」
「ん……大丈夫……」
「なわけあるか」

 問答無用で静波を背負う。青い顔でぐったりした静波は、はじめは抵抗しようとしていた。

「ひとりで……いけるから……」
「いいから、黙っておぶわれてろ」

 なるべく人通りのない廊下を歩き、保健室までつれていった。

「……ありがとう」

 先生に静波をお願いして保健室を出ようとしたら、ほんのり赤くなった顔でお礼を言われた。
 こんな努力を重ねて、今では「愛してる」とふざけて言っても抱きついてもイヤがられない──照れかくしはされる──ようになった。自分で言うのもなんだが、ものすごい進歩だと思う。
 ……でも、あと一つ、なにかが足りない。
 本当に、もうちょっとなんだ。

 いろいろと考えながら、今日の分の仕事を終わらせた。