「木城くん、それ洗ったら倉庫もお願い」
「はーい、すぐ行きます」

 俺は手をとめずに、マスターの照屋(てるや)さんに顔を向けて返事をする。
 ちょびヒゲをたくわえたマスターは、俺がいる洗い場に顔だけを突っこんでいた。銀ぶちのメガネが蛍光灯の下でにぶく光っている。

「マスター、注文おねがーい」
「はーい」

 客席から声をかけられて、照屋さんは注文をとりに行ってしまった。
 俺はグラスに汚れがないのを確認して、照屋さんに指示されたとおり倉庫に向かう。
 そこには、業者さんの手で運びこまれたダンボール箱が積まれていた。
 丁寧に、手早く開けて、なかに入っている紙ナプキンやストロー、コースターを取りだした。それを空いてるカゴにつめていく。
 ふと、新聞をポストに入れていく作業を思い出した。