おれたち2学年のクラスはA、B、Cの三つしかない。さらにおれや木城や鐘石のいるC組は廊下の端だ。そこなら休み時間のときにたむろしたり、だべったりできる。2人がいつも交渉するのもこのスペースだ。

「森センに今度こそ殺される……!」

 木城は英語が特にヤバいようだ。基本的にどの教科もおれと同じく低空飛行だけど、英語はいっつも赤点スレスレ。鐘石大明神様に何度救われたか数えきれない。

 話を戻そう。

「自業自得」

 うわぁバッサリ。
 捨てられた子犬のような瞳で見つめられても、鐘石の心は不動だった。〝仏の顔も三度まで〟とは聞くが、今回がその3度目だったようだ。

「しずちゃんはいつからそんな冷たい子になっちゃったの……?」

 木城は泣き落とし作戦へと変更した。うん、これは幼なじみだからこそ使える手だ。
 2人は小学校からの付き合いだとだいぶ前に聞いたことがある。ちなみに言っとくけど男女交際のほうではない。くされ縁みたいなもんだ。
 おれと2人は中学からの付き合いになる。知り合ってすぐに付き合ってると勘違いしたおれは、それはもう色々と気を回したりした。2人きりで帰れるようさっさと1人で帰ったり、逆に居残ったりもした。
 1日だか2日でバレて、「何のつもり?」と主に鐘石に詰めよられたおれは、「だってお前ら付き合ってんじゃん!」と叫んでしまった。
 それからの騒動は記憶に新しい。「んなわけあるか!!」と見事にハモった2人に、これまたそろってパンチをお見舞いされた。やっぱり付き合ってんじゃん。
 そんなこんなで、おれは2人と友人関係ってやつを続けて今に至るのである。だからこそ断言する。この方法では鐘石は落とせないと。