安武君が部屋を出たタイミングで布団から顔をだすと思ったより近くに八尋くんの顔があった
距離にしておよそ10㎝もない
それから見つめあう私たちを静寂は見守り、そっと触れるだけのキスをした
彼と付き合って初めてのキス。人生初めて
「嫌だったか?」
恐る恐る聞いてくる彼にブンブン首を横に振った
「あのね、私、八尋くん以上に優しい彼氏知らないよ?
今日だって髪の毛乾かしてくれたり、可愛いって言ってくれてたよね。布団の中にいたときもね、八尋くんの心臓もドキドキしてて手から伝わってくる温もりと優しさも愛おしいなって思っちゃったの。だから嫌なわけないもん」
「ん、ならいい。深雪もドキドキしてたみてぇだし?」
いじわるな八尋くん
私がいっぱいいっぱいなの知ってるくせに
「八尋くんのばか……」
「悪かったって、ほらそろそろ時間」
「うん、また明日ね。おやすみなさい」
「あぁ、おやすみ」
明日の班が八尋くんと一緒だから嬉しい
顔の赤みを引かせるために手で仰ぎながらうきうきした気分で女子部屋まで戻った
私が帰った後の男子部屋で八尋くんがいじられてるなんて私は知るはずもなく、消灯時間が過ぎて同室の子が寝ちゃっても咲耶とふたり恋バナを繰り広げていた
──fin



