──コンコンコン

「待ってた」


ノックすると八尋くんが出迎えてくれた
手招きされた先にあったのは……


「布団?」


寝るにはまだ早すぎる時間なのにもうすでに布団が敷いてあった


「深雪の髪乾かすのに畳に座ってもらうのは、な?」

「いやいや、八尋くんが寝る布団に私が上がっちゃうのは悪いよ」


どちらも譲らなくて、でも最終的に折れたのは私


「緊張してんの?」

「え?」

「正座だからさ。もっと楽に座って」


確かに八尋くんに髪を乾かしてもらうなんて初めてで、しかも修学旅行中に
異性の部屋に行くのは禁止って言われてたから余計に

私たちの通う学校は校則は緩いけどそれは生徒の自主性を重んじてくれているからで、修学旅行みたいに学校の行事として泊まるときはそれなりの決まりがある
見回りに来る先生は部屋まで入っては来ないし、就寝時間までは自由時間だから旅館の外にいてもいいところは他校よりはずいぶん寛大だと思う


「同室の男子たち戻ってきたりはしない?」

「安武は売店。奏多はどっか気まぐれにぶらつくって言ってたし、大我は肝試し。拓海は告白、ついに咲耶さんにって。」

「ぅえ?!」