隼人と、付き合うことになった。
それにしても、隼人と出会ったことがあるなんて…びっくりだ…。
いや、それよりも。
隼人の命が、あと3年なんて…。
隼人から貰ったメロンを食べる。
甘い味を噛み締めていると、涙がこぼれそうになった。
ごしごしと涙を拭って、窓の外を眺める。
嫌な曇り空…。
『曇り空には、気をつけるんだよ_』
そう言ったのは、おばあちゃんだった。


『あーちゃん、おいで』
いつも私に優しくて、遊びに行くとおやつを出してくれた。
『あーちゃんね、こういう曇り空には気をつけるんだよ』
『えー?どーして?』
当時4歳だった私。
おやつのクッキーを食べながら、縁側に座って外を眺める。
『七瀬家の女はね、代々曇りの日には何か起こるんだよ』
『なにかってなぁに?』
『うーん、そうねぇ…奇数月にはいいこと、偶数月には悪いことって、言われているわね』
まだあの頃は奇数月と偶数月の意味がわからなくて、頭の中がはてなマークで埋まっていたのを覚えている。
今日は…9月…13日。
奇数月、奇数日。
…何かが、起こる。
ぐっと手を握りしめる。
隼人と付き合えた翌日に…。
っ、まさか、隼人!?
そこまでは聞かなかったよ…。
今おばあちゃんに連絡したら聞けるかな…。
スマホを取り出し、おばあちゃんのLINEを開く。
メッセージを打っておき、一向に晴れる気配がない空を眺める。
今日も隼人と会う約束をしているんだ。
ちょっと心配だけど…行こう。

今日は中庭で待ち合わせ。
待ち合わせ場所について、辺りを見回す。
まだ来てないかな…。
近くのベンチに座る。
その時。
「わっ!」
「きゃぁっ!?」
いきなり肩に手を置かれ、思わず叫ぶ。
「びっくりした?」
「は、隼人…!」
ふっと肩の力が抜ける。
「スマホ、持ってきた?」
「うん」
スマホは禁止だけれど持ってきたのは、連絡先を交換するため。
連絡できた方が、何かと便利だから。
「ほい。これ俺のID」
「あ、ありがとう…」
緊張しながらも隼人のLINEIDを読み取って、友達追加。
『⛹️‍♂️HAYATO🏀』
が追加される。
バスケ好きなんだ…!
1発でわかった。
背景もアイコンも、有名なバスケ選手だった。
ふふっ、ちょっと可愛い。
「花鶏可愛い」
「えっ?」
「アイコン」
私のアイコンは、お花と鳥が描かれたイラスト。
友達に誕生日に描いてもらったものなんだ。
お花と鳥なのは、名前が花鶏だから。
背景は友達と撮ったものだし…珍しいものでも無いけどなっ…。
「友達に描いてもらったの…!」
「へぇ、いいじゃん」
隼人はあ、そうだ、と1人のLINEを送ってきた。
「これは帳。んで、今からグループ招待するから入って」
言われた通りにグループに入る。
一瞬で全員ついた既読。
『中2の七瀬花鶏』 ⛹️‍♂️HAYATO🏀
『誰ですかー?』 🌅
『?』 帳
『隼人何してんの?』ナツ
『今日の飯の時話す』⛹️‍♂️HAYATO🏀
『とにかく宜しくしろよ』⛹️‍♂️HAYATO🏀

そんな強引なLINEを残して、隼人はスマホの電源を落とした。