くだらない冗談だって、言って欲しかった。
ただのドッキリだよ~って、笑ってほしかった。
なんだよ~って、一緒に笑い合いたかった。


隼人の寿命が減ったことを伝えられて。
朝日は混乱したように隼人を質問攻めしていて、夏は頭を抑えてパニックをおこしていた。
そして俺……帷は、呆然とその場に立ち尽くす他無かった。
嘘、だろ……。
頭が情報を処理することを拒んでいて、全然働かない。
どうしたらいいのかわからなくて、ただただ呆然と立ち尽くす。
柄になく泣きそうになる。
こんなキャラじゃねぇのに……。
「2人とも落ち着け。……1番混乱してるのは誰だ?」
震える声を絞り出し、できるだけ冷ややかな声を出す。
俺の言葉に黙り込む2人。
「……一旦さぁ、アイス食わね?」
沈黙を破ったのは隼人で。
アイス、という言葉に首を振る人はおらず、みんなで売店へと向かう。
俺はモナカにバニラアイスが入ってるアイスを選び、夏はソーダ味の棒アイス、朝日はカップのチョコチップアイス、隼人はぶどうの実の形のアイスを買った。
中庭に戻り、袋を破る。
「隼人、どーゆーことなの……?」
アイスで頭が冷えたらしき朝日が尋ねる。
「余命が1年になった。……前倒れたのは予兆だったらしい」
淡々と口にする隼人。
「そう、なんだ……」
夏はシャリッとアイスをかじると、ぎゅっと唇を噛み締めた。
「それは……どうにもならない、の……?」
泣きそうな声で夏が聞く。
「無理……だと、思う……」
段々小さくなっていく隼人の声。
っ……そう、だよな……。
元々、3年の命だった時点で解決方法がみつかっていないもんな……。
胸にぐっと重しがついたような感覚に陥る。
「ま、あと1年仲良くしてくれよ……な?」
隼人は泣き笑いのような表情を浮かべた。
「おう!もちろんだぜ!」
ぎゅっと隼人を抱きしめる。
みんなで固まっているから団子みたいだ。
「ちょっ、夏!アイス垂れる!」
だらっとソーダのシャーベットがアイスをつたう。
「ねぇアイス溶けるー!早く食べよ!」
暗い気分を変えるように、俺は明るくそう言ってモナカのアイスを頬張った。
隼人がパニックにならずに、こうして笑って落ち着いていられるのも、きっと花鶏ちゃんのおかげなんだろうなぁ……。
そう思うとちょっと妬ける。
モナカの部分をかじると、味の無いモナカが口の中に広がる。
今の気持ちを表すとこんな感じなのかな。
そっと胸に手を当てる。
トクントクンという心音を確かめる。
よかった……まだ大丈夫。
俺はまだ生きていられる。
にかっと笑って、3人に向かって思いっきり抱きついた。







俺の病名は、『白血病』だ。