急にグループトークで通話が始まった。
なんだよ…と思って見てみれば、開始したのは隼人で。
ただ事じゃないと焦り、急いで通話に入る。
「はい、もしもし?」
「帷遅いでー」
「でもまだ夏入ってないじゃん」
「マイペースだからな〜」
たわいもない会話。
……それだけのためじゃないだろ。
「急に通話なんて、どーしたんだよ隼人」
前々から覚悟してたこと。
確信に変わりそうになるのを必死に抑えて。
ぐっと唇を噛み締める。
「なぁ、答えろよ」
すると隼人は寂しそうに呟く。
「……ごめん、な……」
っ、あ……?
『ごめん』って……まさか。
「隼人、おま……」
「おい隼人!急に何のつもりだよっ!」
俺が言いかけた瞬間に通話に割り込んできた夏。
「夏……お前なぁ」
「何の話してんだ?」
この空気を読まない感じも夏らしい。
「みんな来たか……今から中庭来てね」
少しの沈黙のあとそう告げて通話を切られた。
はぁ……。
ため息を吐き出し、ベッドから立ち上がる。
「とばちゃん?何処に行くの?」
それに気づいた俺の母親が声をかけてくる。
「ちょっと中庭に」
「ダメよ!!」
母親は顔を真っ赤にして怒鳴ると、俺をベッドに寝かせてきた。
「ダメよとばちゃん……寝てなくちゃ……ほら、ねんねしましょーねー……」
俺は布団を払い除けて、母さんに向き直る。
「ごめん。俺は行かなきゃ」
「なっ……」
急いでスニーカーを足に引っ掛けて、部屋を飛び出した。