待ち合わせ場所の中庭に行くと、隼人はスマホを触って待っていた。
「花鶏!」
ぱぁぁっと顔を明るくさせる隼人。
「花鶏チョコ食べれる?」
「うん」
「良かった。はい」
手のひらに置かれたのは、可愛く包装されたチョコレート。
ピンクと紫色のグラデーションが可愛い。
「ありがとう」とチョコレートを受け取り、1つ開いて口に入れる。
「美味しい……!」
「良かった」
隼人はスマホを脇に置いて、私の方をじっと見つめてきた。
「なぁ……退院って、どーゆーこと?」
「あ…なんかよくわかんないんだけど、何も異常がないから退院する、って」
私は包み紙を折り紙にして折り始める。
「そっか……」
沈んだような隼人の声。
「でも!お見舞いとか、行くから…ね?」
慌てて付け足すと、隼人は嬉しそうに微笑んだ。
「ありがと。楽しみにしてる」
「それから」、と付け足した隼人。
「さっきの女達は誰?知り合い?」
女達……あぁ、あの人達か。
「それが……よくわからなくて」
「どーゆーこと?」
こちらを振り返った隼人は不安そうに眉が下がっていた。
「記憶がなくて……」
「っ、ご、ごめん……」
「大丈夫だよ」
隼人は突然、私をぎゅっと抱き締めてきた。
「ごめん……ごめん……っ」
……なにか、あったのかな。
今度は、私が聞く番。
「ねぇ隼人……さっき倒れたのはどうして?」
その言葉に、隼人はびくりと肩を震わせた。
「っ、あ……え、っと……」
「別に私は怒らないから教えて欲しいな……例えば余命が少なくなったとか?」
「っ、え?」
どうやら図星らしい。
「何日減ったの」
「……ん」
聞き取れないよ……。
もう1回と催促すると、口を開く隼人。
「……1年」
!?
「余命が……1年、減った……っ」
私は言葉を失ってしまった。