君に甘やかされて溺れたい。



* * *


 T高を後にして、私たちは無言で歩いていた。手はずっと繋いだまま。

 いつまでこのままなのかな?
 まだ離さなくてもいいのかな。

 正直離したくない。


「藍良くん、ありがとう」


 私はやっとお礼が言えた。


「藍良くんがいてくれたから、話せたよ」

「ううん、紅ちゃんが頑張ったからだよ」


 こんな時でも優しくて、笑顔がかわいくて胸が締め付けられる。


「……私ね、猿渡くんとはいい感じだと思ってたのに好きじゃないってみんなの前で言われて、すごくショックだった。
男の子ってわからないな、怖いなって思って逃げたの。漫画の世界の男の子は甘くて優しいから。

でも、藍良くんは現実の男の子なのに甘いよね」

「うーん、好きな人にはちゃんと好きって言わなきゃ伝わらないよって教えられてきたからかなぁ。
それに他の人はどうかわからないけど、僕は好きな気持ちは何度でも伝えたいって思うよ」

「どうして?どうしてそんなに想ってくれるの?」


 藍良くんは最初からずっと優しかった。
 高校に入学して同じクラスになって、初めて会った私なんかにずっと優しくしてくれる。


「これ、覚えてない?」