今の私は藍良くんにもらってばかりだから、私もちゃんと返したい――。


「猿渡くん!」


 放課後、T高の近くで待った。
 校門から友達と一緒に出てくる猿渡くんを見つけて、声をかけた。

 声が震えていたかも。
 今もすごく緊張してる。


「……未波?」


 猿渡くんはびっくりしていた。


「お前、何しに来たんだよ」

「っ!」


 う、やっぱり怖い。

 でも向き合うって決めたんだ。
 ちゃんと話をするって。


「紅ちゃん」


 近くで見ていた藍良くんがスッと私の隣に来て、優しく私の手を握ってくれた。


「大丈夫だよ」


 握られた手から温かさが伝わって、心が落ち着く。
 勇気が湧いてくる。

 私は深呼吸をして、今度はちゃんと猿渡くんを真っ直ぐ見た。


「あのね、猿渡くんにずっと聞きたくて。
あの時言ってたことは、本心だった?」

「い、今更なんでだよ」

「ずっと心の中で引っかかってたけど、向き合うのが怖くて。でも、前に進みたいって思ったから……」

「っ、なんだよそれ……知らねえよ!俺には関係ねえだろ!」