優依の声に振り向く卓也。
その時…卓也の口から信じられない言葉が飛び出した。
「兄貴…」
えっ?
どういうこと?
優依が卓也のお兄さん?
優依と卓也は兄弟?
「卓也…久しぶりだな」
優依は卓也にゆっくり近付いて来ると、卓也の腕を掴んだ。
「嫌がってんだろ?離せよ」
優依の低い声がエントラスに響く。
私の腕を掴んでた手の力が抜けた。
手を離されて、私は優依に抱きつく。
「大丈夫だから」
優依が優しい笑顔で言った。
クリスマスのあの事件を見るまでは好きだった卓也。
でも今は、卓也のことを怖く思ってしまう…。
私は、恐怖から開放された時みたいに、涙があふれ出した。
優依の腕をギュッと掴んだ。



