優依は、私の方に向くと笑顔を見せる。


私の傍に来ると、腰に手を回した。


そして上半身だけ、卓也の方に向けると、



「ありがとな卓也。感謝するよ」



笑顔で言った。
けど…目の奥は笑っていない。



「行こうか」



優依が私に言った。



「う…うん」



優依は私の腰に手を回したまま歩き始めた。



「兄貴!」



私たちの背後で卓也が叫んだ。



「あー?」



優依は私から手を離して、卓也の方に向いた。


私も卓也の方に向く。



「はっ…」



私は、手で口を押さえた。


卓也の右手に握られてたもの…。


それは…ナイフだった…。