「海璃が署名捺印したら、いつでも出せるようになってるから」



優依が私の頭をポンポンと軽く叩いた。



「何なら今ここで書く?」



優依はスーツの内ポケットからボールペンを出して、机の上に置いた。


私はボールペンを握る。
ボールペンを握った手が震えていた。


ドキドキする。


優依との結婚が現実になろうとして、
嬉しさのあまり目は涙でウルウルしていた。



「手震えてるぞ」


「だって…何か…緊張して…」



私の震える声を聞いて、優依が笑う。


私は"妻"の欄に自分の名前を書いた。



「あっ…ハンコ…持ってない…」



優依の顔を見た。



「海璃のかーちゃんに挨拶したいから、これからお前んち行ってもいい?」


「えっ…美咲さんに挨拶なんかいいよ~」


「そうはいかねぇんだよ!大切な娘を嫁にもらうんだから。よしっ!行くか!」



優依は私の頭を撫でると、立ち上がった。


私もイスから立ち上がり、優依に抱きついた。


ありがとう…優依…。
幸せになろうね…絶対に…。