私と優依はソファーに座った。
「優依…ありがとう…」
「いいって!これ、うちの洗面所に忘れてただろ?」
優依はダウンジャケットのポケットに手を入れて、私に手の平に乗ったピアスを見せた。
「あっ!」
私は耳を触る。
「ありがとう」
「電話しても繋がらねぇし。
メールしても返事もねぇからさ。届けようと思ってマンションに来たら、下で海璃が男に絡まれてるのが見えて…」
えっ?
私は鞄から携帯を取り出した。
開いてみると…画面は真っ黒。
充電切れだ…。
「それじゃー電話も繋がらねぇし、メールの返信もないはずだわな」
優依が携帯の画面を見ながら言った。
「そうだよね…ハハ…」
私は携帯を閉じると、鞄の中にしまった。
「ねぇ…優依…」
私は、卓也が優依のことを"兄貴"と呼んだ真意を確かめたかった。



