始めた就活は大学入学当初から決めていたアナウンサー一本。
高校時代から雑誌関係者やメディア関連に伝手を作っておいたり、大学の先輩(現役アナウンサー)の紹介で有名アナウンサーとも知り合いになれた。

そんな俺に『入社当初数年は恋愛タブーだから』と、アドバイスをくれたSTVの有名アナウンサー。
帯番組を幾つも持っていて、誰もが知っているような知名度を誇る人。
そんな人に、『付き合ってる子がいるなら、整理しとけよ』と言われ、アナウンサーと恋愛を本気で天秤にかけた。

別れたくない。
初めて好きになって、両想いになれた子なのに。
夢のために捨てるような真似できるわけがない。

現実を話して、別れたとして。
俺が独り立ちするまで『待ってて』とは言えない。
女性の二十代なんて人生で一番華がある貴重な時間だ。

何年になるかも分からない状態で、保留にするだなんて無理に決まってる。

俺と付き合うようになって、心だけでなく外見もどんどん綺麗になる彼女。
周りの男が彼女の魅力に気付き始めて来て、毎日焦る自分との闘いだった。

他の男になんて取られたくない。
俺以外の男の隣りにいる彼女なんて想像すら出来なくて。

だから、あの時。
俺は彼女を傷つけたとしても、俺以外の男を好きにならないように仕向けた。
彼女が男嫌いになって、俺以外の男に、二度と恋すら出来ないように。



六年ぶりに見た彼女はますます綺麗になっていた。
元々落ち着いている印象だったが、それに色気が加味されて。
俺は一瞬で目を奪われた。

取材先で再会したのは偶然ではなく、必然だと思った。
同僚に呼ばれた名前が『鮎川』。
彼女はまだ独身だった。
俺がそう仕向けたわけだけど、誰かの妻になってないことに心の底から嬉しさが込み上げた。

……のに。

『その手、離して貰えますか?』
目の前に現れた、彼女の彼氏だという男。
長身で目鼻の整った顔立ちは男の俺が見ても美男だと思えた。
しかも、仕事もできそうなオーラまで醸し出して――。