自宅から持参したハンディタイプのかき氷機で、買って来た冷凍フルーツを削る。

ゼリーやヨーグルトも買って来たけれど、それは一人の時に食べて貰う用。
前島課長の息子さん、たっくんが風邪を引いた時はこれ(フローズンフルーツ)が一番効く。
冷たくて、喉越しがよくて、ビタミンも摂れて。

「熱があって、喉が痛い時はこういう方がいいと思って」

彼の手に器とスプーンを持たせ、肩にカーディガンを掛ける。

「旨っ……何これ」
「市販の冷凍フルーツをかき氷機で削っただけだよ」
「………マジ、天才」
「課長の息子さんが寝込んだ時、これが好物なんだよね」
「……へぇ」

マンゴーとメロンを削っただけだけど、こういうひと手間が病んでる時はありがたいもの。

「冷蔵庫にゼリーやヨーグルトとか買って来てある」
「……ん」
「それと、茶碗蒸しとスープも作っておいたから、起きれるようになったら温めて食べて」
「え?」
「飲み物はここに何本か置いておくね」
「……至れり尽くせりだな」

申し訳なさそうに眉根を下げる楢崎。
普段見せない弱気な顔に、思わずキュンとしてしまった。
……まだ私にも、こういった感情が残ってたんだ。

「必要な時に手を貸す約束でしょ?」
「……そんなのもあったな」
「こういう時くらい頼ってよ」
「……フッ」

私たちの間には、見えない壁がある。
けれど、お互いに納得しているから、何ら問題はない。

「こういう弱ってる楢崎、プレミアムものだからね~。『彼女』の特権、行使させて貰った♪ウフフッ」
「何だよ、それ…」

視線を逸らした彼。
熱で赤いのか、照れて赤いのか。
ほんの少し頬が赤らんでいる気がした。