「過呼吸じゃない? ビニール袋で口を塞いで」
駆け寄って恵子が的確に指示を出す。
極度のストレス状態で倒れてしまったみたいだ。

「先生、どうにかして!」
郁が頭を抱えて叫ぶ。
雄太が必死でなだめるけれど、もう郁の耳には届かなかった。

「早く家に帰りたい、もうヤダもうヤダよ」
ぶつぶつと呟いて頭を抱え続ける郁を見て、先生は覚悟したように唾を飲み込んだ。
「こ、ここで待ってなさい。少し行ってくるから」

「先生、どこに行くの?」
とっさに声をかけた美麗に先生は「大丈夫だから、心配しなくていいから」と、答えたのだった。