生贄教室

恵子はため息を吐き出して窓から離れた。
「人を食べたのに、どうして自衛隊はなにもしないんだ? 普通攻撃するだろ?」
雄太が不服そうな表情を浮かべる。

グラウンドに化け物がいても、まだそれが現実として受け入れられていなかった。
まるで作り物みたいだし、なにより自分の身に降りかかる出来事ではないと、どこかで思い込んでいる。
「いや、攻撃したのかもしれない」

昂輝が真剣な表情で呟いた。
「は? そんなわけねぇだろ。だったら死んでるだろうがよ!」
利秋が怒鳴りながら昂輝に近づいていく。

「死ななかったんだとしたら?」
その言葉に誰もが黙り込んだ。
うるさいくらいのヘリの音が耳を刺激し続けている。
「あの化け物が死ななかったんだとしたら、自衛隊は負ける」

小さな声で言ったのは清だった。
普段は全くしゃべることのない清の声に利秋が一瞬ビクリと肩を震わせた。