S組には妙子の泣き声が聞こえてきていた。
仁がいなくなってからの妙子は毛布にくるまって出てこようとしない。
残りの5人は話をすることもなく、みんな黙り込んで座っていた。

時計の針ばかりがカチカチとうるさいくらいに聞こえてくる。
美麗がそっと立ち上がってグラウンドの様子を確認した。
化け物はまだそこにいて座り込んでいる。

口を開かないと顔がどちらへ向いているのかもわからない。
定期的に呼吸はしているようで、丸まった背中のあたりが膨らんだりしぼんだりを繰り返している。

「なにを見てるんだ?」
静かな声で昂輝が訊ねてきた。
「化け物は眠らないのかと思って」

もうすぐ夜の12時になる。
化け物が朝まで眠ってくれれば、その間の生贄は必要ないのだけれど、目がどこにあるかわからないから、寝ているかどうかの判断もつかなかった。

「美麗は少し寝たらどうだ?」