生贄教室

振り向くと妙子の泣き顔があった。
顔をぐしゃぐしゃに歪ませて鼻水まで出ている。
「汚ったねぇ顔だな」

仁は最後にいつものように憎まれ口を叩いて笑った。
そして妙子の頭に手を乗せる。
「じゃあ、また明日ね。妙ちゃん」

それは小学校の頃の帰りの挨拶だった。
その瞬間だけ、ふたりは当時の自分たちに戻っていた。

ここはS組ではなくて通学路。
目の前にふたりの家はあって、隣り合って建っている。
ふたりはちょうど中央の生け垣の前にいて、手を振って別れる。

「うん。また明日ね」
妙子が答える。
仁は微笑んでベランダへ出たのだった。