甘くて、甘い。



小さくて、甘い。

小さいのに幸せ。





その声が好き





「好きって言って」






甘い声。甘い言葉。

甘くて落ち着くこの時間。




私に甘さをくれる。




私を甘さで埋めてくれる。





「だーめ」





なんでだよーって拗ねて見せるところも
可愛くて甘い。




今すぐ会いたい。
また触れたい。



あたたかくて、
優しくて甘いにおいで



甘い声でたくさん愛を囁いてくれて


甘い言葉で溺れさせてくる。






甘い眼差しで

私を見つめながら





あたたかくて大きな手で



私を満たしてくれる。






あの時間が大好きだった。



もっともっと2人でいたかった。







つくづく思う。


邪魔が多いなぁ。







生活も仕事も家族も



過去も


すべてが邪魔でしかない。









しがらみが多くて

長い時間、私は彼に触れられない。







ねえ、離れたくない。



ずっと隣に置いておきたい。







私の中で閉じ込めておきたい。




隣で眠ってる彼を見てそう思った。







あのとき、もう少しで





本当の意味で彼を自分だけのものにできた。








言葉に表せないほどの独占欲と




底が見えない愛が


もう少しで全部を飲み込むところだった。










スヤスヤと私の隣で眠っている(しゅう)



首に手をかけたとき






このまま締めたら

簡単に私のものになっちゃうんだ。






そう思ったら、このまま締め続けるのも


悪くはない、そう思った。









私だけのものだね。




そう思って嬉しくなった。








だけど、秋がうっすらと目を開けて




「ん、かわいいね、杏梨」






って言って頭を撫でてくるから







このまま締めたら





もう撫でてもらえなくなるんだって分かっちゃって









締める手を緩めた。











だって、秋のこと愛してる






だけど、同じぐらい秋の手で撫でられるのが




幸せで大好き













嫌なの、動かなくなった秋が隣にいるの







ちゅーできるのも嬉しいけど





杏梨からばっかりは嫌なの


















あったかい秋が好きだから






冷たいのは嫌なの


















その声も聞けなくなると思ったら




やっぱり嫌だった。











他の女を見ることはなくても



嫌われることはなくても









あたたかくない秋が嫌で




秋からちゅーされなくなるのが嫌で






声が聞けなくなるのも嫌だから。







首からそっと手を離して






唇に触れるだけのキスをして





隣で眠ることを選んだ。











「ねぇ、秋はしあわせ?」




本当はどう思ってるのかなんて分からない。




眠ってる秋に話しかけても


答えてくれるはずもない。







「杏梨は幸せだよ」







誰がなんて言おうとこれが愛で






秋に対する感情は愛してるって名前で






このモヤモヤも愛してるからなるもので














離れたくないのも



愛してる人から離れるのが嫌だから












秋といると


秋と話してるとすごく甘い。











骨の髄までドロドロに溶かされるような




麻薬みたいな甘さ。








中毒みたいに欲しくなって




それ以上の甘さが欲しくなって





足りなくなって求めての繰り返し。

























静かだな。








「、、寝たの?」






電話のむこうからは返答はなく







大きなダブルベッドが

一人で寝るには広すぎて











彼と私が遠くにいると


強く感じさせた。




























「おやすみなさい」















微睡みの中で








ふと、昔の会話を思い出した。











「別れた」







「そうなの?通話する?」







「暇つぶしにあいてしてくれ」






「いいよん、かける?」






「かけるね」

















22分11秒間














寝れなくなった。











苦しい。





苦しい、苦しい。













もう、幸せなはずなのに。










この感情は愛からできるもの?









愛からできるものがこんなに苦しいの?





こんなに辛いの?











こんなに胸が締め付けられて






こんなに涙が溢れるものなの?

















愛って甘いんじゃないの?






どうして邪魔するの?





なんで消えないの?
















崩れ落ちる音がする。























もう、私から何も奪わないで。













十分、傷ついた。








ボロボロになって何かに縋らないと

自分が見えなくなるぐらい。














周りがわからなくなるぐらい





それぐらい心が囚われて



深く沈んで深く傷ついた。
















あれも愛してたからなったのかしら。













血の気が引くような感覚が






真っ白になる思考回路が






望んでもないのに震える手が







霞んで見える視界が
















心に穴が空いたような感覚が










あれが愛の副作用なら






















こんな愛はいらない。







苦いのはいらない。
















もう二度と。













3度目はないはず。







きっとない。











たぶんない。

    



















吐きそうなほどの甘さが好き。





















苦さを飲み込み続ければ









いつかは慣れて何も思わなくなるのだろうか。