魔法3日目(友引)

 その後のわたしはとっても忙しかった。
 まず落とした箒を取りに行って、箒をぶつけてしまった男の先輩に、お詫びに一緒にカラオケ行こう、としつこくナンパされ続けながらも何とか交わしつつ謝った。
 チャラくて有名な先輩に当たってしまったのが運のつきだ。

 次にマルチーズ見ませんでしたか?と掃除中の校内を聞いてまわり、用務技師室に逃げ込んでいた幸太郎をやっと探し出した。
 幸太郎にデコピンを食らわしたあと、幸太郎を放課になるまで預かってくれるように用務技師さんに頼んで教室に帰ると、SHRの時間に大幅に遅れていた。

 結局、遅刻と犬のこととで、後で職員室に来るように、と笠井先生にお説教の宣言を受けてしまった。
 そんなこんなで、体が空いたのは11時半をまわった頃だった。

 2階の職員室から3階の教室の階段をのぼる途中、
「今日こそは、ボーイミーツガールを上手く演出しなければなるまい。そこのき――いや、今日は友引、昼は凶と出ている……。駄目だな」
 昨日聞いたのと同じ声を背後から聞いた。

 昨日のように振り向くと、サッと影が動いて誰かが去っていく気配がする。
「……」
 わたしは何も聞かなかった。
 うん、何にも聞かなかったし、見なかった。
 そう自分に暗示をかけて、教室へと向かう足を速めた。