「そんなミサにはわたしがおまじないしてあげましょう~」
 まほりはペンケースから油彩の黒ペンを取り出すと、徐にわたしの右手を取った。
「本で見たインドのおまじないなの」

 まほりはわたしの手の甲に丸を描いて、そこに12枚の花弁を付け足す。
 それから丸の中に三角形を一つ描いてから、それとは逆さまの三角形を重ねて描く。
 なんていうんだっけ、そう、陰陽師とかが描いてそうなイメージのあれ。
 こんなのどこで覚えて来るんだろう?

「ミサの愛情運うなぎのぼりだね」
 とまほり。
「余計なお世話だよ、まほり」
「いいのいいの。年上の言うことは聞きなさい~」
「一ヶ月誕生日早いだけでしょ」
 最後にその怪しい図形の中心に、これまた怪しい文字のような記号のようなものを書き込んで、まほりはペンを置いた。

「これでミサの恋愛感度高くなると良いけどなあ」
「ならないといいな」
 わたしがそう呟いたのと同時に、教室のドアが開いて教師が入ってきた。

「教科書しまえー、テストするぞー」
 わたしとまほりは顔を見合わせた。まほりは苦笑いしたけど、まほりはまだいい。
 サボり癖があるだけで頭の出来はいいんだから。

 問題なのは、吸収力の悪い頭を持つわたしだ。
 授業にちゃんと出ているし、素行も比較的良いのにバカ。
 真面目バカ。
 わたし、救いようがないかもしれない。

 それから行われた確認テストの結果は、まあ、言うまでもない。