「ミ、ミサキ?」
「……立ち上がると涼しいの?」

 机の上からは、校庭を横切る大型バイクの姿が見えた。
 全体に爬虫類の鱗のようなペインティングをほどこしていて、左右の側面から扇状の外装パーツが広がっている変わった形をしたバイクだ。

 何と例えたらいいのか、そう……。
「エリマキトカゲか!」

 納得のいく表現が見つかったところで、ちょうど、
「こらああ火恩寺!校庭でバイクを乗り回すな!」
 数人の先生たちが外に出ていったのが見えた。

 火恩寺?そういえば、1年生の頃、そんな名前の、ライオンみたいな頭した男子生徒がいたような気がする。
 おもむろにバイクを止め、ヘルメットを取ったライダーがこちらに気づいて、深々と一礼した。

 ん、わたし?

 わたしも頭を下げようかと迷っている間に、ヘルメットを装着してバイクを発進させると、走り去っていってしまった。