――――起きて~ん、うっふ~ん、起きて~ん、うっふ~ん。

 まどろんだ頭の中に濁った声が反響して、わたしは目を覚ました。
 枕もとのそれを叩いて止めると、何の夢だっけ、と思うともなく思いながら、天井を仰ぐ。

 眠りすぎた朝のように、生ぬるい眠気が身体を支配していた。
 まだ横になっていたい、と思う身体をのろのろと動かし、上半身だけ起こしてみる。

 今日は一体いつで、どうして目覚ましに起こされたのだろう、とぼんやりとした頭で思う。
 そうしているうちに、明日の確認テストで合格できればもう補習を受けなくていい、そう昨日思いながら眠ったのを思い出した。

 寝起きのストレッチのつもりで、軽く腰をひねると、右手前方の本棚がちょうど視界に入った。
 子どもの頃からうちにある、わたしの背よりも少し高いかどうかというくらいの、小ぶりの本棚だ。

 なぜか不意にその本棚が気になり始め、並べられている本の背表紙をぼんやりと眺める。
 中段の一番右に、黒い背表紙の薄い冊子がはさまっているのに気がついた。

 確か映画のパンスレットか何かだ、と頭では分かっていたのに、気づいたら、わたしはこの冊子を手に取っていた。