「コータローは、麻美とか沙紀とか、その他運動部の女の子達とか先輩とか、割とモテてらっしゃるみたいですしー。そういう子たちにかっこいいって崇め奉ってもらえばいいでしょ?」

「崇め奉る……?つーか、な、何でそれを知ってるんだよ……」
「さあねぇー。わたし今横堀幸太郎ですからー。色々とコータローを取り巻く状況を知らせてもらったよ」

 バイオレンス過ぎるサッカー部のメンバーの寝相とか、お風呂の王者になりたい幸太郎とか、色々を。
 けれど、そんなことを知るよしもない幸太郎はなぜか動揺している。

「い、色々?」
「君たち、ちょっといいかな?」

「「え!?」」
「人のお腹の上で喧嘩するのはやめてくれないかな?それに、色々なものを完全に置いてけぼりにしているよ」

 そうプリンスに言われて周囲を見渡すと、袋から出てきた様子のまほりや戸田さんに、松代君、食堂のおばちゃん、そして、その他諸々の生徒からの好奇の視線が一様にこちらに向けられていた。

 火恩寺君と龍に至っては、その隅のほうで、呆れた様子でこちらの動向をうかがっている。
 わたしたちのやり取りなんかより、龍がこの場にいることのほうが注目に値する気がするけれど……。

「と、まあ。こんな感じで、穂波君が顔にコンプレックスを抱いていようと、わたしはかっこいいと思うから、プリンスが持ち帰る必要はないね」
「強引にまとめたな……」

「とにかく、プリンス、穂波君の中から出て行って。それに拾ったかけらは、龍に返して欲しいの」
「いいよ」
 突然、穂波君が目を開いて話しはじめたので、少し驚いた。
 気を失っていた穂波君自身が目を覚ましたのだと思う。

「今、いいよって……」
「この青年の身体も、龍の玉のかけらとやらも返してあげようということだよ。中々面白いものを見せてもらったからね。より面白くなるような種を蒔いて、時期を見てまた人間界に来ようと思うんだ」

「どういうこと?意味が分からない」
 さっきまで変な理由をつけて、穂波君の身体を手放したくないと言っていたのに、突然話を呑むといわれても、胡散臭さしか感じない。

「分からなくても構わないさ。これは、すぐには分からない秘密の――――」