「そんな10年前くらいのことを言われても困るんですけど」
「じゃあ、今は、カズシの顔かっこいいって思わねーのかよ?」

 びしぃっと穂波君の顔を指差して、聞いてくる。
 そう言われ、わたしは気を失ってしまっている穂波君の顔を見る。

 長いまつげに、細面に、バランスよく配置された目鼻口。
 正直、かっこいいか悪いかで言ったら、断然かっこいい。

 特に、昔大好きだったヒーローのことを思い出した今となっては、かっこよかったドッグブルーの役がオーバーラップしているから尚更そう見える。

「う、うーん。かっこいいはかっこいいよね」
 嫌な予感がしながらも、素直にそう言えば、幸太郎は鬼の首を取ったように、
「ほら見ろ、七つ子の魂百までもだ!」
 言ってくる。

「いや、それを言うなら、三つ子でしょ」
「七歳の頃のことだから七つ子なんだよ」

「うっさいなあ、昔のことをぐだぐだと。わたしは穂波君をかっこいいって言って何が悪いわけ!?」
「ひ、開き直ったな……。悪いっつーの、幼なじみなんだし、俺が一番かっこいいって思ってて欲しいだろ」
「はあ……」

 とりとめもない、正直どうでもいいことにこだわる幸太郎に嫌気が差してくる。
 どっちがかっこいいとか悪いとか、わたしには、そんなのは大した問題じゃない気がするからだ。

 というか、小学校低学年のときの喧嘩の原因を今掘り返すなんて馬鹿らしい。