「あ、あれはたまたま乗っかる形になっちゃっただけの事故だよ。こんなこと言って、こっちの動揺を誘って逃げる気でしょ?穂波君の身体だって、あわよくばお土産にする気でしょ?」

「逃げるなんて、それは正しくない。こうしてのっとっていると、身体の主の感情が流れ込んでくることがあるのさ。この青年はどうやら自分の容貌が好きではないみたいだ。だったら、俺が魔界に持ち帰って、外出用の身体として有効利用されてもらおうと思っているだけさ」

 プリンスの理屈はまるでおかしいけれど、それよりなにより、穂波君のことだ。
「容貌が好きじゃない?顔がいやってこと?」
「……多分な」

「コータローは何か知ってるの?」
「この世界のカズシが、俺の知るカズシと一緒なら……。あいつ、ファザコンをこじらせてたから、おじさんに似ていく自分の顔がいやだったんじゃねーかな」

「お父さん?」
 そういえば、龍の見せた過去の記憶の中で、穂波君はお父さんに何か思う所があるみたいだった。
「でも、どうしてコータローがそんなことを知ってるの?」

「ガキの頃、勝負をしたから。あいつが自分の顔を好きになれるのが先か、俺が――――」
 言葉を区切って、わたしの顔を見る。
「俺が自分の顔を好きになれるのが先か?」

「な、何でだよ!?顔にコンプレックスがあるように見えるのか!?」
「だったら、穂波君だってコンプレックスがあるみたいには見えないよ。だって……」

「ドックブルーに似てかっこいいもんな。どんだけレッドが活躍しても、ブルーかっこいい!って、何だよ。顔が良ければ良いわけか?どーせ俺は、ブルーにはなれねーっつーの。コータローはどう見てもレッドタイプだって、父さんにも言われたっつーの!」

 何か幸太郎が愚痴りモードになっているのですが……。