「ミサキ、タツヒコが抑えてくれてるうちに何とかしねーと。あいつ、限界が近いぞ」
 遠まわしになじるプリンスの言葉に、火恩寺君顔は土気色になりつつある。
「何とかって言っても……」

『燃やすか?』
「却下」

 プリンスは出て行くかもしれないけれど、その前に穂波君が丸焦げになってしまう。
 穂波君の中にいるプリンスを追い出すには、どうしたらいいのかな?

 何か衝撃を与えるとか?
 そんなことを考えていたけれど、その間にも火恩寺君の手が緩んでいくのが分かった。
 このままではまずい。そう思ったとたんに、体が勝手に動いた。

「火恩寺君、どいて!」
 わたしはプリンスへと駆け寄ると、その勢いのまま、利き腕でその胸元へとラリアットをかました。
 短い悲鳴を上げて、倒れたプリンスの上に馬乗りになって逃げられないようにする。

「うわ、痛そー……」
「だって、こうでもしないと逃げられちゃうでしょ……。けど、これで出て行ったかな?」
「出て行ってはいないよ」

「え!?」
「どうやら、この穂波和史というものの身体は気絶してしまったみたいだけど」
 目をつぶったままの穂波君の身体から、穂波君とは別の声が話しかけてくる。

「しかし、不意をついて、二度も俺の上に乗っかるなんて、君はよほど俺のことが好きらしい」
「二度!?」
 幸太郎が不審な目でこちらを見る。