穂波君が撫でている間、ずっと幸太郎はそっぽを向いて不機嫌そうにしていた。
 あまりにもあからさまなので、ひょっとしたら幸太郎は穂波君と仲が悪いのかな、と疑ってしまう。

 そんなわけで、感じ悪いよ、と心の声で幸太郎に話しかけると、
『そんなことねーよ』
 と気のない返事だ。

 やっぱり、穂波君と仲悪い線が有力?
『え、カズシ?仲良いけど?』
 今度は別に話しかける気じゃなくそう思うと、勝手に返事が返ってくる。
 何なのかな、このわたしの心の声ばかりだだ漏れ状態。

 仲が良いのに、撫でられて不機嫌って言うのがちょっと理解できなかったけれど、
「この子、良く吠えるね。俺、警戒されてちゃってるのかな?」
 と穂波君が言うので、これ以上心の声を通して話すのはやめることにした。

「ねえねえ3人と――いや2人とも。そうやってなごやかーに戯れてるの楽しそうだけどー」
 まほりが割ってはいる。
「ん?何まほり」
「ち、こ、く」
 わたしはスマホを見る。
 始業開始2分前。ここから学校まではあとおおよそ5分の距離……。
 そう言えば、周りに生徒が見当たらなくなったと思った。
 とそんな場合じゃなくて!

「は、走るよ、3人とも!」
 と言うが早いか、わたしは駆け出していた。
「わ、ミサ。抜け駆けー!」