魔法9日目(友引)

 龍の後を追い、たどり着いたのは、湖の一隅に橋を渡して建てられた古めかしい神社だった。
 それは本当に小さな神社で、入口の鳥居からすぐにお堂がのぞけるくらいの広さしかなかった。

 少し覗いてみれば、お堂の前で火恩寺君と男性が話している様子が伺える。
 そして、入口には焔生神社と掘られた立石がある。

『ほぉ。随分と懐かしい場所だ』
 龍がその立石の上で呟く。

「ここも焔生神社?山麓にあるのも焔生神社だったよね?」
『ここはかつて焔生神社の本宮があった場所だ。我が以前目覚めたときに、山麓の今の本宮に居を移したのだ。さて、娘よ、火恩寺の者に事情を聞くのだ』

「はいはいりょーかい……」
 体よく扱われている気もするが、端からわたしもそのつもりだったので、
「タツヒコ、取り込み中のとこ悪いけど、用があるんだ」と声をかける。

 火恩寺君と男性が一斉にこちらを見て、身構える。
 そのスピードたるや、まるでもののふのようだった。

「そ、そんな身構えなくても……」
 わたしの姿を見ると、火恩寺君は不審の色を深める一方で、男性は緊張を解いて肩をくつろがせる。