それを見て、まほりが、
「ミサ、魔界に心底行きたくないんだね」
 納得したようにそう言うと、
「ふふっ。じゃあ魔界は次回だね」
 戸田さんが聞き捨てならないことを言い添える。

「今のは魔界うんぬんの問題じゃないよ!わたしとまほりの――――うん?次回?何の話?」
「ふふふっ何でもない。それよりね、龍の玉がなくて力が使えないなら、その玉を探そう?そうすれば魔界に行くまでもないと思うから」

「そっか……。そうすれば、力を使えるようになるよね」
 力が使えない=魔界行き、とわたしの思考は短絡化していたみたいだ。
『だが、只人であるお前達にそのようなことが出来るのだろうか?力を感知することは中々し難いものだと思うが』

「それなら、わたしの持っている魔力計測器で探せば何とかなると思う。それにー、あなたも協力すればもっと楽に探せるよ」
『我がか?』

「そう。ミサとコータロー君は幼なじみっていう縁のある者同士。人と人との縁を司る神様なら協力して当然だよね?」
 戸田さんの言っていた、龍が協力してくれる理由、というのは、そういうことだったみたいだ。
 幸太郎とわたしは、幼なじみという縁があるからという理由。

『なるほど。それも一理ある、か』
「なるほどって……本当に協力してくれるつもりなの?」

 ただ、どうしてもわたしは、焔生の龍を手放しで信じることが出来ない。
 子どもの頃に妙な約束をしたせいで、龍に追い掛け回されたのは記憶に新しいからだ。

『そうだ』
「……その代わりに何かしろとか言い出さないよね?
『何を恐れているのかは分からぬが、我も力を取り返さねば、この土地を守ることすら敵わぬのだ。力を貸すのは理にかなっておるではないか』

「じゃあ、ただ純粋に協力を――――」
『だが、そうだな。お前の肉体に宿る焔が未だに燃えておらぬならば――――』
 小さな焔生の龍の目がぎろりと光る。